- 不具合症状
- リヤブレーキが鳴く、サイドブレーキがあまい。
- 予想
- ライニングのシューが磨耗あるいは硬化してしまっている。
クラウンのブレーキは、フロントはディスクですが、リヤブレーキはドラムブレーキです。
ワイヤーで機械的にライニングを動かす、サイドブレーキの役目も兼用していますので、 構造が少々複雑です。
ブレーキパットの交換は簡単ですが、ドラムのライニング(ブレーキシュー)交換は意外と難しいのです!
ブレーキライニングの交換は、分解作業にあたるので、国の認可を取った修理工場でなければ、交換作業してはいけないのです。
構造をよく理解していないと、危険な場合があるのです。
ライニングはドラムの中で、外側に広がってシューを押し付けて制動力を得ます。
しかし、シューが減ってしまうと、ドラム面までの隙間が大きくなっていき、ブレーキを奥まで踏まないと効かなくなってきます。
クラウンの場合、踏み代が深くならないように、自動調整してくれる機能がついています。
サイドブレーキを引いた際に、シューとドラム面に隙間が大きくなると、自動的に調整ダイアルを回転させる機構が働いて隙間を調整してくれます。
レバーをワイヤーで引いて、ある程度ストロークすると、アジャストダイヤルをワンクリックづつ回す事になるので、シューが外に広がって隙間を自動的に調整します。
しかし自動調整といっても、完全にメンテナンスフリーではありません。
まず、サイドワイヤーの調整が不完全だとおかしなことになります。
サイドブレーキがあまくなったからと言って、サイドワイヤーを詰めて調整してはいけません!
サイドワイヤーを調整すれば簡単に、サイドブレーキの引き代を少なくすることが出来ますが、これは危険です!
画像は、サイドを引いていないにもかかわらず、レバーが戻りきっていません。
通常は、サイドを引いていない状態では、レバーはライニングの裏に接触するくらいになっています。
ドラムを開けなくても確認できます。
ドラム裏にあるレバーのストッパーボルトが当たっていなくて隙間が開いています。
この状態は、サイドブレーキの引き代を、ワイヤーを詰めて調整した結果です。
要するに、サイドブレーキを最初からある程度引いた状態になっているって事になります。
これでは、自動調整もまともに働きませんし、とっても危険な場合があります。
サイドブレーキは、一本のワイヤーを左右に枝分かれさせているので、ゆっくり引いていくと左右で効き始めの時間差があります。
ブレーキの片効きは危険ですが、サイドブレーキの場合片効きは、それ程問題ありません。
しかし、ワイヤーを詰めているので、片側だけ引きずってしまう可能性もあります。
ライニングを交換したり、サイドブレーキの調整したりする場合でも、 私はサイドブレーキの引き代を、ワイヤーで調整する事はまったくありません。
このように以前に調整されてしまっている場合のみ調整する(元に戻す)といった感じです!
ライニングの交換はけっこう複雑ですので、片側ずつ作業します。
分らなくなったら、反対側を確認すれば良い訳です。
そして、ドラムを開けている状態でブレーキを踏んではいけません。
ピストンが飛び出してオイルが漏れてしまいます。
アジャスターは、一度分解してきれいに掃除して動きを良くします。
わずかにグリスを塗って、いっぱいまで戻して短くしておきます。
要所要所にグリスを塗りますが、以前の作業者が全ての接触面にグリスを塗ってある場合があります。
音などを考えれば、金属同士の接触面にグリスを塗るのは有効だと思います。
しかし、グリスを塗った箇所は必ず粉塵が留まってしまいます。
交換したては良いのですが、期間が経てば、シューの粉塵がグリスに混ざって固まり、 逆に動きが悪くなります。
グリスが固まって、自動調整ダイヤルが固着している場合も多いのです。
私は、ライニングとバックプレートの接触面と、必要な箇所に最低限しか塗りません。
サイドブレーキ機構の部分にはいっさい塗りません。
とにかく、やたらめったらグリスを塗るのは逆効果です。
ライニング交換は硬いスプリングが掛かっているので、かなり危険な作業なのです。
スプリングがすっ飛んで、目を失明!
なんて事もあり得ます。
力ずくで掛けないで、ライニングを全てセットして、一番最後に硬いメインのスプリングを掛けると安全です。
細い棒状の物で、テコの原理を使えば簡単に掛ける事ができます。
交換できたら、ドラムを仮にはめて、サイドワイヤーを何度も手でひっぱてみます。
カチカチと自動調整のクリック音がするか確認します。
音がしなくなったら、ドラムを開けて、調整ロッドが伸びたか確認します。
調整ロッドの伸び具合が、だいたい左右均等になっていれば、自動調整はうまく機能しています。
自動調整だけでは、きっちり調整しきれないので、手動でドラムが動かなくなるぎりぎりまで調整します。
今度は、タイヤもはめて、エンジンをかけジャッキアップ状態で回しながらブレーキをかけて、 ライニングをすこし焼いて慣らします。
そして再度、調整ロッドを詰めて、なるべくライニングスレスレに調整します。
引きずってはいけませんが、なるべくギリギリに調整したほうが、ブレーキの踏み代が少なくなります。
サイドのレバーが戻っているか、ストッパーボルトを確認します。
レバーを動かして、ストッパーのクリアランスを紙一重に調整します。
ストッパーの調整が悪いと、やはりサイドを引き気味になったり、逆に遊びが多くなってしまいます。
ライニングの当たりがついていないので、実際に少し走行して、ブレーキを踏んで慣らしをします。
ブレーキの踏み代が多いなと感じたら、サイドブレーキをかけた状態でブレーキを踏んでみます。
サイドをかけない時より踏み代が、かなり少なくなるようだったら、もう少し調整の余地があります。
なるべく、ぎりぎりまで調整して踏んだらすぐに効き始めるブレーキにしましょう。
・・とは言っても、ちょっと走ったくらいでは、ライニングは完全にドラムになじんでませんので、 出来れば1,000キロくらい走ったら再度調整すればベストかな〜
パットもそうですが、残りが十分あったとしても、古くなってくるとシューの材質が固くなって、 「キー」と音がしたり、効きがあまくなってきます。
特に、ライニングは長期間交換されていない場合が多いのです。
残りがあっても、交換するとブレーキの効きも良くなります。
ざっと交換作業を説明しましたが、特に私が丁寧に作業している訳ではありません。
このような作業作業心得は、国の認可を取っている工場なら当たり前の事ですが、平気でサイドワイヤーを詰めて調整してしまうようなアホな整備士もいるのは事実です。
信頼置ける整備工場へもって行きましょう!!